「東京」駅からJR東海道本線に乗り、走ること50分ほどで、神奈川県藤沢市「辻堂」駅に到着します。
 辻堂といえばなんといっても、湘南・茅ヶ崎に代表される海のイメージでしょう。「辻堂」駅から海岸に向かって南下する昭和通りは、別名サーファー通りとも呼ばれ、シーズンには多くの人で賑わいます。
 しかし、今回ウォッチャーが足を伸ばしたのは駅から南の海側ではなく、反対の山側。豊かな緑に恵まれ、はるかに山々を望むこともできる自然が残り、生活しやすく整備された街並みに出会いました。
20代男性。最近ずっとパソコンの調子が悪かったので、思い切ってメーカー修理に出してみました。2週間ほどたちますが、まだ戻ってきていません。早く帰ってきてほしいと願う今日このごろです。
 
新しく変わる辻堂駅前
 梅雨真っただ中のある日、ウォッチャーは天気を心配しながらJR東海道線「辻堂」駅に降り立ちます。天気のいい日には駅から富士山も見えると聞きました。
 駅の改札から北口に出ると、綺麗に整備されたバスターミナルがあります。これは現在藤沢市が行っている土地区画整理事業「湘南C−X(シークロス)」によって、新しくつくられたものです。ほかにもこれから駅舎の改修やホームの拡張も行われるそうです。
 この事業によって駅前に誕生する約20ヘクタールを超える新しい街には、公園、公共サービス施設、総合病院、企業の研究施設、住宅、そして大型商業施設の建設が予定されています。中でも気になる商業施設は、デパ地下スタイルの専門店街や、ベビー・キッズ向けの大型専門店、大型スポーツ店、シネマコンプレックスなどで構成される予定です。現在はまだ何もない原っぱでしたが、完成予定の来年秋を想像して、楽しみになりました。
[湘南C-X]
辻堂駅。今後ペデストリアンデッキが作られ、車道と歩道が分けられます。
広大な敷地に多種多様な複合施設が建設されるそうです。現在とは全く違った街になるのでしょう。
 
どうしても行きたかったパン屋さん
 辻堂に来たなら個人的にどうしても寄りたいと思っていたお店があります。それは、以前東京都港区の虎ノ門に店を構えていたパン屋さん「プルクワ」です。虎ノ門にあったころはちょくちょく足を運んでいたのですが、辻堂に移転してからは一度も訪れたことがありません。「辻堂」駅から南東に進み、湘南新道と交わるところまで歩くと、プルクワに着きます。
 プルクワは食パンやフランスパンをはじめ、ピザやパニーニなど種類が多いのが特徴です。また、自家製の酵母や原料の小麦粉、塩などにこだわっており、パン本来の風味や旨みが味わえます。この後、大きな公園に向かうことを決めていたので、ピクニック気分でファラフェルサンドを購入しました。ファラフェルサンドとは、ヒヨコ豆に香辛料を加えて揚げたコロッケを野菜と一緒にピタパンで挟んだイスラエルのファストフード。ほくほくとした食感とスパイシーな味は、やみつきになりそうです。日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、これから流行るかもしれません。
 今回はテイクアウトしましたが、店頭のテラス席で食事を楽しむこともできます。また、パンを購入した方にはコーヒーや紅茶をサービスしてくれるのも嬉しいところです。
[プルクワ]
藤沢市辻堂元町4-17-11/0466-33-3676/7:00〜19:00/月曜定休、月一回火曜不定休
プルクワ(POURQUT)。湘南の近くでお店をやりたいというのが店主の夢だったそうです。
ファラフェルサンドのハーフサイズ(283円)。イスラエルでは昔からある食べ物だそうです。
 
森のような公園
 お目当てのパンを購入したウォッチャーは「辻堂」駅まで戻り、湘南ライフタウン行きのバスに乗り込みます。バス停留所「大庭小学校」で降り、向かった先は大庭城址公園。昔はお城だったということもあり、公園というよりも山や森といった言葉の方が相応しい感じを受けます。
 中に入り坂を数分上ると、やっと開けた広場に出ます。一面が芝生に覆われており、とびきりのひなたぼっこができそうです。ここで、パンをいただき、空腹も満たされたウォッチャーは少しウトウト……。
 大庭城址公園から周りを見渡すと、近くに森のような場所がもう1つ見えます。さっそく足を運ぶと、その森は塀で囲まれており、入り口がありません。塀に沿って歩いてみると、小窓と双眼鏡のあるスペースを発見。ここに公園についての説明が書かれていました。
 なんでも緑がそっくり残されたこの場所は大庭裏門公園という、野鳥の観察ができる公園なのだそうです。中に入ることはできません。看板によると、藤沢市の鳥であるカワセミも見ることができるようですが、ウォッチャーは見つけられませんでした。時間帯や季節など何かコツがあるのかもしれません。
[大庭城址公園]
藤沢市大庭字城山5230-1
大庭城址公園。一面の芝生はピクニックに最適です。
裏門公園。双眼鏡を覗くと、そこは自然のままの森の中です。
 
子どもたちに配慮したニュータウン
 湘南ライフタウンは、藤沢市と茅ヶ崎市による土地区画整理事業によって生まれたニュータウンです。日本を代表する建築家、故黒川紀章氏によって設計されました。幹線道路と生活道路を平行に配置することで、生活道路になるべく車が入ってこないような工夫がされているそうです。
 公園を後にしたウォッチャーが湘南ライフタウンを散策していると、ふと感じたことがあります。それは中央けやき通りに代表されるけやき並木の素晴らしさ。秋には見事な紅葉が見られそうです。
 さらに歩みを進めると一風変わった建物を見つけました。ここは大庭子供の家(ちびっ子ドーム)と呼ばれる児童館です。ウォッチャーは中に入ることはできませんが、丸太ブリッジや回転滑り台など遊んでいる子どもたちを見かけました。
 次に向かったのが湘南大庭市民図書館。藤沢市や近くの保健医療センターと連携して、ブックスタートという活動が行われています。ブックスタートとは子どもへの絵本の読みきかせを行い、親子のふれあいに役立ててもらおうとする活動です。この活動はボランティアによって支えられていると聞き、ウォッチャーは頭が下がります。
[湘南大庭市民図書館]
藤沢市大庭5406-4/0466-86-1666/9:00〜17:00※火・金は19:00まで(月曜定休)
[大庭子供の家(ちびっ子ドーム)]
藤沢市大庭5307-1/0466-87-4235/10:00から17:00
※1月と11月は16:30まで、12月は16:00まで(毎月第3日曜と年末年始の12月28日〜1月4日は休館)
湘南大庭市民図書館。藤沢市の姉妹提携都市であるマイアミから寄贈されたマイアミコレクションという特別所蔵書物もあります。
大庭子供の家(ちびっ子ドーム)。大人も中を覗きたくなる外観です。
 
ウォッチの最後はショッピング
 中央けやき通りを北に歩いていくと、ボウリングピンの大きなオブジェが目に飛び込んできます。ここは湘南ライフタウンの中でも、ひときわ大きなショッピングセンター、「湘南とうきゅう」です。東急ストアとホームセンターコーナンが入っています。日々の買い物のほとんどはここで済ませることができそうです。ちなみに、ボウリング場は6階にあります。
 歩き回ってクタクタになったウォッチャーはいったん「辻堂」駅まで戻ります。最後に向かう先は、湘南随一の規模を誇るショッピングモール「湘南モールフィル」です。高山車庫行きのバスに乗り、「ソニー前」で下車。3分ほどで到着しました。
 102の専門店とロイヤルホームセンター、三和、トイザらス・ベビーザらス、ファッションプラザ パシオス、ノジマなどの大型店が入っており、湘南随一の規模というのもうなずけます。ちょうどセール中で、最後は存分にショッピングを楽しんだウォッチャーでした。
[湘南とうきゅう]
藤沢市遠藤字滝ノ沢698-10/0466-86-0109/10:00〜21:00(日曜は9:00から)
[湘南モールフィル]
藤沢市辻堂新町4-1-1/0120-610-027/10:00〜21:00
※フードコートは11:00から レストランは22:00まで
湘南とうきゅう。湘南ライフタウンの北側に位置します。
湘南モールフィル。無料駐車場は2100台収用できます。
 
 
ショウルーム。キャビネットやテレビボードから木の温もりを感じました。
工場内では従業員の方々が、真剣な眼差しで作業に取り組んでいました。
[collabore(コラボレ)]
藤沢市羽鳥1-3-11/0466-30-2727/※ショウルームの営業時間は10:00〜21:00(木曜定休)
インタビューに協力して頂いた山形圭史さん。モノづくりが本当に好きなんだという印象を受けました。
ラウンジチェアの一例(13万7550円)。モダンな空間に置くと、どこか懐かしいクラシックな表情を持ちます。
 約80坪の工場内は天井が高く、大小さまざまな工作機械が置かれ、まさにモノづくりの現場といった雰囲気。ここは辻堂駅北口の交差点から北へ15分ほど歩いたところにあるcollabore(コラボレ)という家具工場です。オリジナル家具の製造から販売までを自社で行っています。さらに工場の隣のショウルームでは自社ブランドの定番商品を紹介しています。
 「昔から工作や日曜大工が大好きでした。それを仕事にしようと、平成10年(1998年)から会社を始めました。現在、オーダーと定番商品の割合は半分ずつぐらいですね。ほとんどは個人の方からの注文です」と話してくれたのは代表の山形圭史さんです。
 コラボレの家具は全て自社の工場内で、職人の手によって作られています。一番の特徴は丁寧で正確な仕事。山形さんいわく「日本人は昔から外国の文化をそのまま取り入れるのではなく、そこに工夫を施して独自の文化を作り上げてきました。ウチもそんな日本人特有のバランス感覚をモットーにしています」とのこと。
 フルオーダー家具と聞くと、ウォッチャーは少し敷居が高く感じてしまいます。しかし、まずは「たんすを作りたいんだけど」というような漠然とした相談からでもいいそうです。「過去の製品を見せてお客さんの好みの家具について話し合います。するとだんだんとお客さんも自分が求めている家具の姿が決まってくるものです」と山形さん。「配慮と感覚の共有が一番大切。どのようなものが欲しいのかもさることながら、どのような暮らしを目指しているかをヒアリングすることで、生活に根付いた家具を提供することができると思います」とおっしゃっていました。実際に顔を合わせて打ち合わせができること、製造現場も見られることが、フルオーダーの何よりのメリットなのでしょう。
 また、コラボレでは家具の修繕も受け付けています。「ウチで作った家具でなくても、基本的にはお受けします。ただし、家具によっては修繕のことを考えずに作られているものもありますので、できる範囲とできない範囲をお伝えしています。とくに最近は修繕の依頼が増えていますね。ものを長く使うことが見直されてきているのかもしれません」といいます。「家具はもともと長く使うことが前提に作られてきました。これから100年、しっかり使える家具を作っていきたいです」。
 30年前から辻堂を知っている山形さん。「辻堂はいい意味でも悪い意味でもマイペースな街。海も山もすぐ近くにあって、緑も多い。時間の流れがゆるやかで、暮らしに適度な余白を残しているようなイメージです。現在行われている駅前の再開発は、これまでにない劇的な変化だと思います。ぜひ良い方向に発展してほしいです」。
※掲載の内容及び外部リンク先は平成22年7月29日(木)現在のものです。

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